中学生で決めた自分の道
「そば打ち職人になる」
河部(かわべ)君がそう決めたのは、中学生の頃に幌加内町で行われている「幌加内新そば祭り」に父親と足を運んだ時。
その意志は揺らぐことなく、幌加内高校に進学し寮生活をすることを決めました。
大人数の中学校を経験していたこともあり、あまり大きな高校への進学は好んでいなかったことも彼にとってはメリットがありました。
「僕は少人数のクラスの方が好き。アットホーム感のある家族のような繋がりが合っていた」。
そば打ちをやりたくて、決めた進学でしたが河部君にとっては少人数という学校の環境も適していました。
大変だったのは農生会
農業高校の幌加内高校では他校で言うところの生徒会が「農生会」と呼ばれています。
河部君はそば打ちに精を出す一方「農生会」の副会長として、学校運営に携わりました。
生徒の意見を学校に反映し、自分たちで学校を動かす楽しさもありながら「全ての人の意見が同じわけではない」という難しさも経験しました。
また「農生会」の中でも様々な意見が分かれ、その中で上手くバランスを取ることや教員と生徒との間に入り大人と高校生を繋ぐ経験も多く積みました。
「仕事」をやるということ
「好きなことを仕事にできている僕は幸せ」
彼がこう言うように多くの人が自分の好きな仕事に就けるわけではありません。
また自分が何が好きで、何を仕事にしたいか分からない人も多くいるのではないでしょうか。
「ずっと好きなことをやり続けて、今の場所にいる。人生がスムーズすぎて怖いくらい」
笑みを浮かべながら話す彼が、好きなことを仕事にできたことは自分自身でも言うように〝奇跡〟だったかもしれません。
しかし、彼は周囲への感謝やサポートをしてくれた方への想いを常に持ち続けていることができる生徒でもありました。
そんな立ち振る舞いが、自分の好きなことを仕事に導いてくれたきっかけだったのかもしれません。
働くことが楽しい
河部君は高校に通っている頃から「早く働きたい」という想いを持っていました。
実際に働いてみて、やはり働くということの楽しさを実感しているようです。
「いずれみんな働くことになる。でも覚悟を持って働かないと仕事も楽しめなくなると思う」
一言に覚悟と言っても色々な覚悟があります。
仕事をする覚悟。お客さんに対する覚悟。自分自身に対する覚悟。
しかし、どれか一つでも覚悟を持って働くことによって、自分への自信が高まり働くことへの意義が湧いてくるのではないでしょうか。
幌加内で働くということ
河部君の地元は、幌加内から車で約3時間半ほどかかる千歳市。
人口も多く、隣には札幌市というとても利便性の高い町の出身です。
しかし、高校卒業と共に河部君が選んだ働き先は幌加内。
アルバイトで働いていた「幌加内ルオント温泉」での職場が働きやすかったのと、幌加内高校との繋がりを続けたかったという想いからでした。
必ずしも大きな町のように利便的な町ではありません。
それであっても、幌加内という小さな町で自分のキャリアをスタートさせるということは、自身にとっても大きなアドバンテージです。
僕がなりたいそば打ち職人
「プロフェッショナルなどに出れるようなプロの職人になりたい」
少し照れた顔を浮かべながら彼は言いました。
そして河部君がこれからも打っていきたいそばは〝幌加内産のそば粉〟
これは町や学校に忖度しているわけではなく、色々な土地のそば粉を使った経験から「やっぱり幌加内のそば粉が打っていて楽しい」となるそうです。
「そば粉の触り心地や自分の思い通りのそばを打つには、幌加内産のそば粉が一番合っている」
他の地域のそば粉や、様々なそばを食べ比べたからこそ分かる、その違い。
河部君が若くして持っている繊細な感覚は、幌加内高校のそば打ちで積み重ねた経験でもあるのです。
大切なのは「楽しい」を感じること
彼が幌加内高校の後輩に伝えたいことは〝日々楽しむこと〟
高校生活の中では修学旅行や学校祭など大きなイベントが強く思い出に残るかもしれません。
しかし、日常の何気ない会話や普段の授業でのやりとりなど小さな出来事を見つけ楽しむ努力が必要だと言います。
つい、数ヶ月前まで通っていた幌加内高校ではあるものの、二度と戻ることのない高校生活。
卒業したからこそ河部君が後輩に伝えたい、大切な想いなのかもしれません。
先生たちへの感謝
「勉強はできなかった」と語る河部君ですが、逆に色々なことができなかったおかげで、自分の歩く道を決めることができたとも言います。
器用になんでもできてしまうが故に、自分の生き方に迷う人がいる一方、自分自身の特性を理解して人生を歩くということは、大事な自己分析。
自分の道が決まっていたので、先生に進路の悩みで相談するようなことはありませんでしたが、
「サポートをしてくれた先生たちには感謝しかない」
そう話す、河部君が自分の好きなことを仕事にして、毎日楽しく働いているのは根底に「感謝」の気持ちを持っているからこそでしょう。
卒業生プロフィール
河部 秀(かわべ しゅう)
令和3年度卒業生
全国高校そば打ち選手権優勝メンバー
現在は幌加内町、幌加内ルオント温泉で調理師として従事し、主にそば打ちを行なっている。
そば打ち段位は3段位取得。
全国での中でも最年少の部類のそば打ち職人として活躍中。
河部君がそば打ちをしているレストランはこちら↓ 定休水曜日
時間帯によってはそば打ちの実演を見ることも可能↓
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